改正民法(相続法)のポイント②

民法(相続法)が40年ぶりに改正されました。改正では高齢社会への対応として、残された配偶者の老後生活の経済的な安定に配慮し、その権利が拡大されることになります。改正法は、平成30年7月13日の公布日から2年以内に順次施行されます。

●夫婦間の自宅の贈与等を保護する制度の創設
婚姻期間が20年間以上の夫婦の場合、夫が所有する居住用不動産を妻へ遺贈・贈与した場合、これまでは原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱われるために、遺産分割の際に特別受益の持ち戻しが行われ、その分取得財産が減り「妻の老後の生活保障」という夫の意思が反映されませんでした。
改正により遺産分割の際に遺産の先渡しを受けたという取扱いがなくなり、妻はより多くの財産を取得できます。

●民法と相続税では相続財産の範囲が異なる
(1)民法では共同相続人の中に
 ①被相続人から遺贈を受けた者
 ②婚姻、養子縁組もしくは生計の資本として贈与を受けた者
があるときには、被相続人が相続開始の時に有していたものを相続財産とみなし、各相続人の相続分を計算することにしています。
遺贈や贈与を受けた相続人は、算出された相続分から遺贈や贈与の価値を差し引いた残額を相続分として受け取ることになります。これを特別受益の持ち戻しといいます。持ち戻す遺贈や贈与の価額は相続開始時においても、なお現状のままであるとみなして相続開始時の価額で計算をすることとされています。
(2)相続税法上は、生前贈与は贈与税を納付した上で行われており、被相続人の財産から切り離されているため、原則として相続財産に持ち戻すことはありません。ただし相続または遺贈により被相続人から財産を取得した者に限り、相続開始以前3年以内に被相続人から贈与等により取得した財産は相続財産に加算することとされています。

【設例】
相続人:妻および子2人(妻と子の相続分は法定相続分)
遺産:自宅(持分2分の1:評価額2,000万円)
妻への生前贈与:自宅(持分2分の1:評価額2,000万円)


【現行】配偶者の取得分の計算時に、生前贈与分(2,000万円)も相続財産とみなされる
(6,000万円+2,000万円)+2,000万円(生前贈与分)=1億円(民法上の相続財産)
配偶者:1億円×1/2-2,000万円(生前贈与分)=3,000万円
    3,000万円-2,000万円(自宅)1,000万円(預金)
子2人:1億円×1/2×1/2=2,500万円(各々)

【改正】配偶者の取得分の計算時に、生前贈与分(2,000万円)も相続財産とみなされないため、配偶者がより多くの財産を取得できる(老後の生活に寄与する)。
(6,000万円+2,000万円)=8,000万円(民法上の相続財産)
配偶者:8,000万円×1/2=4,000万円
    4,000万円-2,000万円(自宅)=2,000万円(預金)
子2人:8,000万円×1/2×1/2=2,000万円(各々)