外部環境の変化を経営改善に取り入れる
「AI技術の進展」「人口減少」「外国人労働者の受け入れ」等、外部環境の変化が従来にも増したスピードで到来しています。これらの環境変化が自社にどのような影響を及ぼすのかを考え、そこから自社の経営改善の方向性を探り、新しい戦略を考えることが重要になっていきます。
(1)マクロ的な外部環境の変化を知る
社内で「価格改定」や「コスト削減」等に関する検討を行う場合、企業内部からの発想によることが少なくありません。しかしAI技術の進展や人口減少等外部環境が大きく変化する昨今では、自社の足元に従来とは異なった脅威が迫っている可能性があります。外部環境の変化が経営に及ぼす影響には以下のようなことが考えられます。
●経営に影響を及ぼす外部環境の変化
①人口減少によるマーケットの縮小
②技術革新により自社の商品や技術力が陳腐化してしまい売上げの大幅減少
③人手不足が要因で新たな仕事の依頼が発生しても受注できない
④環境規制等が強化された結果、原材料の価格が高騰し生産コストが増加した
⑤デフレによる消費者の低価格志向が進む
(2)自社の周りのミクロ的な環境変化を分析する
外部環境には、人口減少、デフレ、技術革新、制度改正等のマクロ的な環境だけでなく、自社や自店舗の商圏・周辺情報の変化、取引先や競合他社、顧客の動向等の身近なミクロ的な環境もあります。このようなミクロ的な要因まで落とし込んで活かす必要があります。
外部環境をしっかり把握し、その対応策を検討する際に用いられるのがSWOT分析です。
●ミクロ的な要因を探ってみる
①自社や自店舗がある地域や商圏に絞った場合の周辺人口や労働力人口の動向
②周辺の主な世帯層(高齢世帯、ファミリー層、単身層等)はどれか
③飲食業等でこだわりの食材を使う場合は、天候不順による価格の高騰や供給不足の影響を受けやすくないか
④近隣に大手資本のチェーン店が出展する予定はないか
⑤人材不足による人材確保のため、今後も賃金が上昇しないか
(3)4つの支店から自社を分析する
SWOT分析とは、
1)市場の機会(=Opportunity)
2)脅威(=Threat)
3)強み(=Strength)
4)弱み(=Weakness)
を可視化して把握し、経営方針の検討材料を明らかにするための手法です。
市場の変化を知ることが現状分析の出発点となります。先ず機会と脅威の外部環境の洗い出しから始め、抽出した外部環境を見ながら、自社の強み、弱みの内部要因を洗い出します。
過去の成功体験を自社の強みと思い込みがちですが、ここからは新しい戦略はできません。自らでは変えることのできない外部環境への対応に活路を見出しましょう。
①機会:市場・消費の動向、商品の需要を整理し、様々なビジネスチャンスを検討する
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②脅威:自社の努力ではどうにもできない倍部環境マイナス要因を整理する
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③強み:同業他社と比較したときに、具体的に機会に活かせる強みを考える
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④弱み:成長発展や改革を進めるうえでのネックとなっているポイントを整理する
(4)稼働率アップを模索するイタリアレストランの事例
顧客の低価格志向が進む中で、客数アップのためのSWOT分析を活用したイタリアンレストランの事例です。
月商300万円、従業員数4人のイタリアンレストランは、地域の中でやや高級感がある店として定着していました。しかし外食業界の低価格化が進み、ファミレスのパスタやピザが脅威となり、毎年5~7%程売上が減少し赤字が常態化していました。
営業すればするほど赤字が続く悪循環を何とかして止めたいのですが、コスト削減といっても単店舗では効果が出にくく、ましてや原価を落とすことは品質の劣化につながることから、オーナーも望んでいません。そこで顧客志向の「機会」の徹底検証を目的としたSWOT分析を行い、現状を打破するための戦略を検討しました。
【内部要因】
●強み(S)
・全て手作りで味に自信がある
・十五穀米、豆乳、自家製野菜ジュースで健康志向を意識したメニューを提供している
・飽きがこないようメニューを毎月変えている
●弱み(W)
・喫茶メニューが少なく、喫茶目当ての客は近隣のハンバーガーショップ、ドーナツ店に奪われている
・人手が足りず、営業時間内は手一杯である
【外部要因】
●機会(O)
・女子大学が近くにあり、学部が新設され学生が増える
・ワンコインメニューのニーズはある
・商品提供の工夫次第でテイクアウト市場はまだまだ伸びる
●脅威(T)
・客の財布の紐が堅くなるので、外食は高級志向から削っていく
・ファミレスの強みに低価格、ドリンクバー、24時間長居できる等があり、客を奪われている
この事例では、外部要因の機会と内部要因の強みを分析して「女子大学が近くにあるので、認知度が上がれば稼働率は上がる」という機会に、「全て手作りで味に自信がある」という強みを組合わせて、学生向けのランチメニューに加えてアイドルタイムに客席を女子大生のサークルに開放するファン化戦略を検討しました。また「ワンコインメニューのニーズはある」という機会に、「十五穀米、豆乳、オリジナル野菜ジュースで健康志向を意識したメニューを提供している」という強みを組合わせて「健康志向のワンコインのテイクアウトランチの開発」に取り組み、さらに学生がいない土・日の稼働率を上げるため女子会等に気軽に利用できる工夫を検討し、経営改善への一歩を踏み出しました。
このようにSWOT分析を活用するれば、外部要因の機会と内部要因の強みを組合わせて経営改善に結びつけた戦力の検討が可能になります。
これまで成立していたビジネスが成り立たなくなる前に外部要因をきちんと捉え、自社の経営を再確認してはいかがでしょうか。