事業承継を成功に導くためのステップ

事業承継を円滑にすすめるためには、早めに準備に取りかかり、税理士等の専門家の支援を得ながら事業承継計画を策定・実行し、行動を積み重ねていく事が大切です。具体的にどのような事を行うのかを【事業承継ガイドライン】掲載の「事業承継に向けたステップ」に基づいて見ていきましょう。

【ステップ①】事業承継に向けた準備の必要性の認識
いつか必ずやってくる事業承継、その重要性は理解していても、緊急性がないために取り組みは後回しになりがちです。後継者教育や業務の引き継ぎに要する期間を考え、経営者が60歳に達する頃には準備に取りかかる予定を立てておきましょう。準備状況は「事業承継自己診断チェックシート」でセルフチェックをして見ましょう。

【ステップ②】経営状況・経営課題等の把握(見える化)
次に経営状況や事業承継を含めた経営課題、経営資源等を見える化し、現状を正確に把握します。
会社を取り巻く環境や強み・弱みを把握するにはSWOT分析を行うと分かります。
数値により現状を把握するには中小会計要領等に基づき適正な会計処理によって作成された決算書や月次資産表が必須です。さらに深堀するために会計ソフトを活用し、部門別や店舗別の損益計算等もできるよう経理のレベルアップも図る必要があります。
またローカルベンチマークを活用すると、以下の内容をまとめることができます。
(1)財務情報やライフステージでの位置付け
(2)非財務情報
  ①経営者への着目
  ②関係者への着目
  ③事業への着目
  ④内部管理体制への着目
②事業承継課題について
先ず後継者候補の有無を確認し、候補者がいる場合その意思の確認や能力や適性・意欲等が、後継者として相応しいかどうか検討することが必要です。また候補者がいない場合には社内外で候補者を探します。
親族内承継の場合、やがて起こる相続に向けて相続財産の確認と遺産分割方法、相続税額の試算、納税方法等を検討しましょう。財産評価を行う場合、株式について平成29年度税制改正により取引相場のない株式の評価の見直しが行われたので改めて評価し直し、影響の確認が必要です。

【ステップ③】事業承継に向けた経営改善(磨き上げ)
事業承継は経営者交代を機に事業を発展させる絶好の機会です。後継者に経営のバトンを渡すまで、事業の存続・成長・発展に努め、常に経営改善を図り、より良い経営状態で引き継ぐ事が望まれます。
事業承継は債務承継であるとも言われるように、中小企業に借金はつきものです。返済・保証・担保といった重荷を少しでも軽減させ、経営者の不安を取り除く事が大切です。親族外承継であれば、なおさら債務の軽減は必須課題です。会社を磨き上げ、後継者が継ぎたくなるような経営状態にしましょう。
事業承継の際に「経営者保証に関するガイドライン」に即して、前経営者の債務保証が解除された事例があります。金融機関にこのような依頼をするためにも財務状態の改善に取り組みましょう。
経営の競争力を高めるために、税理士等の認定支援機関の支援を受け、「中小企業等経営強化法」に基づく「経営力向上計画」を策定・実行する事や「早期経営改善計画策定支援」を受ける事により、早めに経営改善に着手しましょう。後継者を巻き込んで、これらを策定すると事業内容を理解するとともに、経営に対する参画意欲が高まるので大変効果的です。

【ステップ④-1】事業承継計画の策定(親族内・従業員承継の場合)
事業承継の時期を明確にし、限られた期間の中で事業用資産や経営権の継承・後継者の育成等を円滑に進めるために、具体的にいつ何を行うべきかをまとめたのが「事業承継計画」です。計画を策定することが目的ではありません。経営者と後継者が一緒になって会社を良くするためにはどうしたら良いかを検討し、その中で事業承継をどう位置付けるか等を共に考え、共通認識を持つきっかけや手段となることが大事で、策定するプロセスや実践内容を重視しましょう。併せて会社の理念や経営者の想いを伝承させるために「社歴表」を作ることもお勧めです。
【ステップ④-2】M&A等のマッチング実施(社外への引き継ぎの場合)
親族や社内に後継者がいない場合、事業を第三者に引き継ぐことになります。引き継ぎ先を探し、交渉・実行するには相当の弛緩を要するため、早めに専門的なノウハウを有する事業引継ぎセンターやM&A専門業者、金融機関等、信頼できる仲介業者を選定し、継承条件等に合った相手先を見つける必要があります。

【ステップ⑤】事業承継の実行
以上のステップを踏み、事業承継計画やM&A手続に基づいて自社株式(経営権)の委譲や事業用資産の移転を実行します。
そして事業承継後(ポスト事業承継)は、後継者が新たな視点を持って事業の見直しを行い、企業が次なる成長・発展のステージに入ることが期待されます。