役員給与の減額にやむを得ない事情がある場合

定時株主総会等で役員給与を決定する際には、予想できなかった事由が発生したことによって、役員給与を減額改定せざるを得ない場合があります。以下のような「やむを得ない事情」がある場合は、減額前と減額後の役員給与について損金算入が認められます。

①役員の職制上の地位や職務内容に重大な変更があった場合(臨時改定事由)
例えば「常勤から非常勤」「取締役から監査役」等地位の変更や、社長、副社長、専務、常務等役位の変更による減額、あるいは不祥事による役員給与の減額、役員の入院加療等により職務執行が不能になったことによる入院加療中の減額等が、やむを得ない事情にあたります。

②経営の状況が著しく悪化した場合(業務悪化改定事由)
例えば、主要な販路の喪失や主要な取引先の倒産等による事業規模の縮小のための経営改善計画に基づく減額や、経営状況の著しい悪化から経営改善計画によりリストラを行わざるを得ない状況での減額等があります。

③減額に至った経緯等を記録に残す
①②はどのような場合でも認められるということではなく、本当にやむを得ない事情が存在するかどうかが実態に即して判断されることになります。
したがって、減額に至った経緯を説明できる資料やその手続きに関する株主総会議事録、経営改善計画書等の書類を作成し保存しておくことが必要です。
資金繰りや業績、財務状況の悪化といった事実があっても、それが一時的な資金繰りの都合や単に業績目標に達しなかったことによる減額、利益調整のみを目的とした減額であれば、やむを得ない事情があったとはいえません。したがって、経営の状況が著しく悪化したとは認められません。
期間中に減額改定を検討せざるを得ないことがないよう、機首において、前年実績、当期の利益計画、借入元本返済を含めたキャッシュ・フローを踏まえて、役員給与の額を決めることが大切になります。

●税務リスクへの対応
職位の変更、経営者の傷病等による職務執行不能、経営状況が著しく悪化した場合に、役員給与の額をそのままにしておくことは、減額しないことによる税務リスクが生じることもあります。
そのため会計事務所とも相談して、経営改善計画の策定や社内手続き等を迅速に進め、税務上の問題が生じないようにしておくおく必要もあります。