税金負担を抑えて事業承継する方法

事業承継する場合、高収益部門と低収益部門があれば税金負担を抑えて事業を承継する良い方法があります。それは事業を分離して収益の多い部門を新会社が承継する方法です。

①会社の業績が上がると自社株式評価も上昇する
会社が非常に好業績となり利益が上がり続けると内部に資産が蓄積しますので、その会社の株式評価額はどんどん上がっていきます。結果として相続財産の評価額も上昇し、相続人の方々の相続税負担も大きくなっていくでしょう。
会社規模が「中会社の小」の場合、相続評価額の計算式は
類似業種比準価額×0.6×1株当たり純資産価額×0.4
となります。この場合、今後の相続税を考えると「類似業種比準価額」と「純資産価額」の両方を引き下げる方法を考えなければなりません。
先ず、類似業種比準価額を引き下げる方法は、類似業種の株価を基に、評価する会社の1株当たりの「配当金額」「利益金額」および「薄価純資産価額」の3つで算定します。同族会社にとって配当金額を増やさないことは簡単ですが、類似業種比準価額を下げるには今後の「利益金額」と「薄価純資産価額」を引き下げる方法を考えなければなりません。会社の業績を上げながら「利益金額」や「薄価純資産価額」を減少させる等の方法を考えるのは至難の業です。
また純資産価額を引き下げるにも、今後の「利益金額」を抑えることが重要です。

②後継者が新会社を設立して高収益部門の営業譲渡を受ける
後継者への既存会社の承継のかめに株式評価額の引き下げを考える場合、高収益部門を既存会社から分離させ、新設会社に営業譲渡するという組織再編による手法を考えます。
この方法によれば、高収益部門から得られる収益性は、新設会社に計上されることになるため、今後の利益は新設会社に帰属し蓄積します。結果として、高収益部門を生前に既存会社の株主から新設会社の株主へ事業承継した形になります。
今後既存会社は、収益性が低くなり株式評価額の上昇が鈍化しますので、今後は既存会社の株式の相続評価額の大きな上昇を心配しなくて済むようになるでしょう。

③従業員の移籍による退職金支給で株価を下げる
営業譲渡に伴い既存会社から新設会社へ従業員が移籍する場合には、その従業員はいったん既存会社を退職することになります。
これらの従業員達に既存会社の退職金を打ち切り支給するとします。この方法を実行すれば、移籍した従業員達への退職金の支給によって、会社の利益金額が大きく圧縮されるとともに、資産が流出することによって薄価純資産価額も小さくなります。結果として、類似業種比準価額と純資産価額の両方が下がり、既存会社の株式の相続税評価額がさがります。
一方、新設会社において退職金制度のない新たな報酬再度を導入すれば、将来の退職金債務という株式評価上控除できない負債の問題も解決でき、非常に有効な手段といえるでしょう。

④会社分割ではなく営業譲渡方式で行う
高収入部門を子会社として分割する方法は、株主間の税務上の問題は少ないですが、原則として自社株式の純資産価額を引き下げることはできません。
従って、類似業種比準価額と純資産価額の両方を引き下げるには、既存会社の高収益部門を子会社として分割するのではなく、新設会社として高収益部門を譲渡する「営業譲渡」方式が有効といえます。
ただし、この方法は営業譲渡にかかるのれん代の営業権をどう捉えるかという税務上の問題が生じることにご留意ください。